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セント・ルカ産婦人科では不妊治療と一般婦人科疾患(お産以外の女性疾患)の診療を行っています。

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赤ちゃん〜今ならきっと授かる〜講座 卒業生のお話

<2015年2月28日開催>

こんにちは、セントルカ卒業生のEと申します。

私は2012年7月から1年2ヵ月の間セントルカに通い、腹腔鏡検査と2度の顕微授精を経て妊娠し、昨年5月に出産しました。今日はセントルカでの治療を通じて感じたことなどお話ししたいと思います。

不妊治療をはじめたのは私が35歳、夫が45歳の時です。結婚してから2年目で、2人ともすぐにでも子どもが欲しいと望んでいましたがなかなか授からず、夫は早い段階から一度検査したらどうか?と言ってくれていましたが、私は「きっとそのうちできるから気にしなくて大丈夫」と先延ばしにしていました。

そんなときに、私の父が入院し、末期のがんであることがわかりました。これまで漠然と、子どもはいつか授かるだろうと思って過ごしてきましたが、残された時間を考えると、一日でも早く子どもを授かり、その子どもに一日でも長くおじいちゃんと一緒に過ごしてほしいと思うようになりました。ちょうどそのころ、市から子宮がん検診のクーポンが届き、がん検診と一緒に不妊治療の相談をすることを決め、地元の産婦人科を受診しました。

半年ほど前からつけていた基礎体温表を見る限り問題はなく、夫と一緒にひととおり検査をして、問題なければタイミングを見て、という流れでしたが、その最後の卵管造影検査で思わぬ問題が見つかりました。
卵管に詰まりか癒着がみられ、それが原因で妊娠が難しいということでした。腹腔鏡手術で解消することもあるけど、近隣の病院では難しく、年齢的なことを考えると体外受精なども視野に入れて専門の病院を受診した方が良いとのことでした。

自分の身体が原因で子どもができなかったということに落ち込む気持ちもありましたが、まずは専門の病院で診てもらわなければ何もわからないということで、セントルカに紹介状を書いていただくことにしました。

初めての診察の日、再度、卵管造影検査を受けることになりました。検査がひととおり終わり、卵管は何とか通っているようだけど、前回の検査に使った造影剤が残っていて、腹腔鏡できれいにした方が良いということを告げられました。
卵管が通っていることにホッとしたのも束の間、先生から多嚢胞性卵巣症候群という初めて聞く名前を聞かされました。それがどんな病気なのかを質問する余裕もないまま、不安な気持ちになりましたが、最後に先生が「このタイプはねぇ、妊娠しやすいからねぇ。うん。できるよ。」と言ってくださったことで、初めて光がさしたような気持ちになりました。

それから、自分で注射を打ってタマゴを育てて、診察の際に超音波検査で成長具合を確認し、排卵を促すという治療の流れになったのですが、毎回、モニターに映されるタマゴがとてもかわいく思えて、毎回「どうかちゃんと育ってこの世界で会うことができますように」と祈る気持ちで見ていました。
残念ながら妊娠につながることがないまま、その年の10月、腹腔鏡検査をうけることにしました。この腹腔鏡検査と同時に体外受精を受けるかどうかと選択するのですが、実はぎりぎりまで迷いました。腹腔鏡検査後に自然妊娠しやすくなるという話を聞いていたから、気持ちのどこかで「そのうち自然妊娠できるんじゃないか?」という思いがあったからです。
最終的に決めたのは、毎回モニターに映されては会えないままでいるタマゴに早く会いたいという気持ちが大きくなったことと、「体外受精であっても妊娠率は決して高くなく、年齢を重ねるごとにその結果はさらに厳しくなる」というデータが頭に残っていたからです。自分で決めたゴールまで体外受精にチャレンジできるのは数回しかないことを考えると、せっかく腹腔鏡検査を受けるなら、限られたチャンスを活かさないともったいないと思いチャレンジすることにしました。

腹腔鏡手術では残っていた造影剤をきれいに洗い流し、6個の卵子を採卵することができました。そのうち、無事に受精し育ってくれたのは1つだけでしたが、何とか無事に育ってくれますようにと願いながら胚移植の日を迎えました。
手術台にのぼり、名前を呼ばれ、モニターに培養室でたった一つのタマゴがチューブに吸い込まれるところが映し出され、そのあと、超音波で子宮の中を見ながら移植される様子を見ることができます。
その日は私のおなかの中にタマゴが帰ってきてくれたことがうれしくて、大事に連れて帰らなきゃととてもわくわくした気持ちで帰宅しました。自分の中にタマゴがいると思うと、とてもうれしく幸せな時間でした。
けれど、胚移植から2週間後、院長先生から告げられた検査の結果は陰性。とても悲しくて、正直その日のことはあまり多くは覚えていないのですが、いつもはパパッと必要なことだけ話して診察が終了する先生が、その日はとても言葉を選んで話してくださったように感じました。
その次の周期は一回治療を休みたいという気持ちもありましたが、休むことで限られたチャンスを逃してしまうかもしれないという怖さと、自分で決めたゴールまではできることをしようという気持ちで治療を再開しました。その日の夜、自分で注射を打つ時、また1からスタートかと思うと、とても悲しく、泣きたい気持ちになりましたが、注射し終わって寝室に帰ろうと部屋を出ると、夫が何も言わずに部屋の外で待っていてくれました。夫がそうやって何も言わずに寄り添っていてくれたことが私にはとても支えになりました。

実は腹腔鏡手術の準備と同時に体重オーバーで指導を受けることになったのですが、この時も、夫は一緒にがんばろうと言って、毎朝オリジナルの小松菜豆乳スムージーを作ってくれるようになりました。なかなか思うように体重は減りませんでしたが、スムージーのおかげで便秘が解消したり、夫の血液検査の結果も改善するなど、とても良い状態になっているので、妊娠〜出産を経た今でも毎朝スムージーを作ってくれています。
体重指導は、1日に4回体重を計測してグラフにして診察時に確認してもらうという方法でした。朝のウォーキングとスムージーを続けていましたが思うように結果が出ないまま卒業となってしまいました。せっかく指導していただいたのに、本当に申し訳なかったのですが、いつも忙しそうにしている看護師さんをなかなか捕まえることができなかった私にとって、指導を通じて治療以外のことをお話できる時間をもてたことはとてもありがたかったです。

腹腔鏡検査後の半年間は妊娠しやすいと言われ、もしかしたらこの期間に妊娠するのではないかという期待もむなしく、2013年7月、私たちは2回目の体外受精を受けることに決めました。ちょうどそのころ、当時勤めていた会社を辞め、転職していました。転職の際に、あらかじめ不妊治療中であることを伝えてありましたので、診察の為の休みや早退などかなり協力していただきましたが、体外受精の準備がはじまると、診察や注射でたびたび病院に通わなければならず、仕事と治療の両立は難しいと感じました。この時の採卵でとれた21個のタマゴのうち、顕微授精でちゃんと育ったタマゴは4個。採卵直後に卵巣が腫れていたため、その次の周期で体調を整えてからおなかに戻すことになりました。
ちょうどその間に千葉に住む一番上の姉が第3子を出産したばかりで、上の子どもたちの世話がいるということで、1週間ほど千葉に滞在しました。体外受精の準備と仕事の日々で慌しく、採卵が終わったことにはぐったりしていましたが、1週間大分から離れてのんびり過ごしたおかげでリフレッシュすることができ、その甲斐あってか、その後の周期で卵を1つおなかに戻して、無事に妊娠、昨年の5月無事に出産することができました。

以上が私の体験となりますが、もう一つ、セントルカでの治療をはじめるにあたり、私たち夫婦が決めていたことをお話しします。
夫と共に参加した新患教室で「治療だけが生活の全てにならないように。」「治療の内容について二人で話し合って決めるように。」というお話がありました。「できなかったら」というのはあまり考えたくないことでしたが、先の見えない治療はきっと苦しいと思ったので、一つの区切りとして、私が40歳、夫が50歳になる5年後をひとまずのゴールにすることにしました。そして、子どものいない人生を自分たちがどう生きているかを考えた時に、私の仕事はできる限り続けること、そしてもし子どもを授かることができたら院長先生に抱っこしてもらうことを目標にしました。
診察の待ち時間に、いつも掲示板の赤ちゃんの写真を眺めていましたが、そこに写っている宇津宮先生は診察の時とは別人のような笑顔で、はじめはそのギャップに驚きましたが、いつか自分も子どもを連れて来ようと思いながら楽しみに眺めていました。
出産後しばらくして、子どもを抱っこしてもらいにきた時の先生の笑顔はとても優しく、本当にうれしかったです。

最後になりましたが、今回経験談を話しませんか?というお話をいただいたときに、まず思ったのは院長先生やセントルカのスタッフの皆さんに感謝の気持ちを伝えることができるということと、これから治療をはじめられるみなさん、とくにと主人にどうか奥さんをサポートしてあげてくださいと伝えたかったからです。
治療期間中、友人や家族、セントルカの皆さん、いろんな人の支えがあってなんとか過ごしてきましたが、誰にも話すことができないくらい落ち込むこともありました。そんなときに、一番支えとなったのは主人の存在でした。夫のサポートなしで治療を続けることは難しかったと思いますし、子どもをもつことができないかもしれないことがわかっても、一緒にがんばろうと言ってくれた主人に本当に感謝しています。決して楽しい治療ではありませんが、先生が言われるように「いまならきっと授かる」と思います。どうかお二人でたくさん話し合って、一緒に治療にのぞんでください。
みなさんが笑顔で赤ちゃんを迎える日が来ることを、心からお祈りしています。つたない話でお聞き苦しいところもあったかと思いますが、最後までお付き合いいただきありがとうございました。


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